1 litter days

訥々

20130713-16 北八ヶ岳での邂逅

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この三連休、私は有給を頂いて四連休にし、北八ヶ岳に単独行をしに行ってきた。私の単独行と言えば、大峰山脈の山々に日帰りで行ったり、北アルプス薬師岳や、久住連山に一泊二日で出かけるだけだった。山行で言えば、二泊三日が最長でしかもそれは二人連れのパーティでだった。穏やかなイメージの北八ヶ岳とは言え、初めての単独行、しかも自炊、長時間行動×2日(7~9時間)は過酷に思えた。
大きめのオスプレーのザックは55Lでテント泊か?と見紛うくらい。今思い返してみると、要らない荷物もいっぱいあったし、必要な荷物が入っていないこともあった。でもこの荷物の大きさは私の不安の現れであり、私の今の実力なのだった。
高度を徐々に上げるにつれ息が浅くなり歩幅が狭まり何度も苦しいと思った。苔むした登山道を駆け下りる時、雨露に濡れた岩稜を渡る時、トレッキングポールが上手く地面に刺さらない時、何度もひやりと焦り、ひどい汗をかいた。尻餅をつくような転け方から体を打ち付けるような転け方もした。体が熱を逃しきれず鼻水は何度も垂れそうになるし、汗が髪に染み込んで顔に張り付いて見られない格好だし。ガスばっかりで視界は不明瞭、陽が当たらずレインウェアでも寒さが凌げず、晴れたと思ったら虻が近寄ってきてぶんぶん五月蝿いし、サポートタイツの上から刺そうとしてる。
でも、高山植物の女王のコマクサは可憐に花弁を垂れていて、へたりながら下った登山道の横を呑気に登るカモシカに、鬱蒼と茂る森にたくさんの三又の鹿の足あと、淡く桃色に色づいたハクサンショウブ。ガスった山に一瞬強い風が吹き登ってきた茶臼山の全容が明らかになった時今まで囚われていた苦しみが一瞬にしてガスと一緒に霧散した。早朝誰もいない東天狗岳で曇り一つない八ヶ岳で主峰が露わになった時、我を忘れて感嘆の声を上げ今までの四日間の全てが報われた気がした。そこから西天狗岳まで走って上り、私の東天狗岳を何枚もカメラに納め、行き交う人に素晴らしい景色が見えますよと何度も声をかけた。何度も振り返り振り返り美しい山々を眺め、立ち止まっては息をするのも惜しいくらいこのままでいてと願った。せめて私がこの景色が見える間だけでもその姿を留めていて。自分の堪え性のないところ、感情で突っ走ってしまうところや、とにかく失敗が多いこと、考え方を中々変えられないこと、それらどうしようもないところを、もう何年も憎んでいるんだけど、こうやって、必ず歩き続けていれば必ず何か実を結ぶ事もあるのだと。私はスピードは早くないけど、ゆっくりでも一つ一つ進んでいればきっといつか何かをなすことが出来ると、山を登りながらようやく自分が好きになれる気がした。